ダン・ブラウン著「オリジン 上」の感想と続きが読めない理由

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オリジン 上 (角川文庫)

 

 

オリジン 上

作者

ダン・ブラウン

 

トムハンクスが主演の映画「ダ・ヴィンチ・コード」、「天使の悪魔」、「インフェルノ」の作者です。

 

トムハンクスは作中で主人公のロバート・ラングドン教授を演じています。

 

私は特にこのシリーズのファンというわけではなく、ダ・ヴィンチ・コードだけ映画で観たことがあるけど、他は映画も観てないし、小説も読んでないです。

 

この記事を書いている時点で続編の「オリジン 下」を読んでいないのでずが、物語の導入部であろう上巻がめちゃ面白くて、上巻小説ランキング1位を贈りたい。

 

上巻小説ランキングで1位を取るというのがどういう事かというと、続きを読みたくない気持ちが芽生えてきます。

 

決して内容がつまらないから読みたくないという訳ではなく、むしろ逆も逆の真逆で、なんなの?真相はなんなの?早く教えて。という感じ。

 

しかし、結論は知りたいけど、エベレストくらい上がりきってるハードルを下巻で越えられる気がしねぇから、続き読みたくないという、こじらせ具合が上巻小説ランキング1位です。

 

これが私の予想をいい意味で裏切ってくれるといいのですが。

 

あの子と付き合いたいけど、今の仲のいい関係を壊したくないから告白できない

 

とかいう恋愛こじらせ系大学生と似た心境かと思います。

 

当時は、じゃあ一生そのままでいるしかねぇな、お疲れっす、あざっしたーと思って聞いいたけど、

 

今なら、わか〜る、わかるよ、キミのキモチ。と言わせていただきたい、いや歌わせていただきたい。

 

以下ではあらすじを簡単にまとめます。

あらすじ

宗教象徴学者ロバート・ラングドンは、元教え子である天才コンピュータ学者エドモンド・カーシュから世界を揺るがす科学的発見をしたので、その発表イベントに参加して欲しいと誘われ、スペインの美術館を訪れる。

 

カーシュが発見したのは、

 

人類はどこから来たのか(人類の起源)

そして

人類はどこに向かうのか(人類の運命)

 

という人類最大の謎と言っても過言ではない2つの問いに対する、科学的な答えだと言う。

 

しかし、これらの問いに解を出すということは、各々異なる信仰をもつ宗教信者に対して、壊滅的なダメージを与えかねない。

 

カーシュは、宗教関係者の不穏な気配には気づいていたが、ラングドンに相談した後、発表を決意。発表イベントに参加できるのは、厳重に管理された招待客だけ。

 

そして(予想通り?)、カーシュは発表イベントで、自身が発見した内容を発表する前に殺害される。

 

カーシュ殺害の実行犯はすぐさま逃亡。裏で糸を引くのは誰なのか。

 

そして、

 

人類はどこから来たのか(人類の起源)、

 

人類はどこに向かうのか(人類の運命)

 

という謎に対する、カーシュの発見した答えは何なのか?

 

ラングドン教授が真相を探るというもの。

感想

なんといっても、この小説の魅力はそのテーマだと思います。

 

人類はどこから来たのか(人類の起源)、

人類はどこに向かうのか(人類の運命)。

 

これに対する科学的な答え。

 

科学的というのは、普遍的ということですね。

 

いつ、どこのだれであろうともこの問いに対する答えは同じです。

 

例えば、現在では地球が宇宙の中心で、地球の周りを他の天体が回っているという人はいないでしょう。

 

太陽の周りを、地球を含めた他の天体が回っているということをみんな知っていますね。

 

「しかし、信仰とは本来、目に見えないものや説明できないものを信じ、実証のない何かを事実として受け入れることです。だから、信仰の対象が人によって異なるのも無理なからぬことでしょう。普遍的な真実など存在しないのですから」

 

「科学はその反対です。科学とは、その本質からして、未知の事柄やまだ説明されていない事柄の物的証拠を見つけようとする試みであり、迷信や誤解を退けて観察可能な事実を選ぼうとする試みです。科学が示す答えは

普遍的です。人々はそれをめぐって争ったりせず、むしろそれを軸にして結びつきます」

著ダン・ブラウン オリジン上 エドモンド・カーシュのセリフより引用 

 

人類はどこに向かうのか(人類の運命)というのは、言い換えると、どうして生きるのか、なんのために生きているのかとも言えると思います。

 

この疑問については、だれでも1度は考えたり、悩んだりしたことがあるのではないでしょうか。

 

この問いに対して普遍的な答えがあるのだとしたら、これ以上些細なことに、あるいは大きなことに悩むことはありませんね。

 

どんなに、うまくいかなくても、思い通りにならなくても、生きている意味は○○なんだから。

 

少なくとも私が、これまで読んできた小説というのは、どうして生きるのだろうという問いに対して、

 

主人公が苦しみながらも、その答えを見つけていく様子が描かれていたり、

 

ふとした文章から、作者の考えやメッセージを感じ取ることが出来るというものでした。

 

そして、その答えは、時に私を勇気づけ、時に本当にそうなのだろうかと一考する機会を与えてくれました。

 

しかし、このオリジンは、どうして生きるのだろうという問いに明確に答えます。と

大胆不敵というか、怖いもの知らずというか、なんつーかとってもアメリカンなテーマとなっている訳です。

 

下巻で、人類はどこから来たのか(人類の起源)、人類はどこに向かうのか(人類の運命)という問いに対して、

 

がっかりしない解が描かれるのかという怖さと、

 

一方で妙に納得できる解が描かれていたら、それを知るのは幸せなことなのか

 

という2つの怖さを前に、恋愛こじらせ系大学生並みにもじもじせずにはいられない。