あいみょん、おめぇ
あいみょん、おめぇ。
俺は、過激なワーディングに反して薄っぺらい内容を平然と唄い続ける、最近若者に流行りのアーティストの大半が好きになれねぇんだよ。
「過激さ」がまずあって、それを中心に曲が作られているようで、全然共感できないし、情景が浮かんでこねぇんだよ。
あぁ、奥田民生みたいなのが聴きたい。
あいみょん、おめぇ。
でも俺は、“なんとなくそんな感じ”のイメージでろくに曲を聴いてもいないのにアーティストをきらう奴がもっときらいなんだよ。
だから聴いた。
あいみょん、おめぇの曲を。インディーズ時代のものから、メジャーデビューしてから現在に至るまで、聴ける曲はだいたい聴いた。
「貴方解剖純愛歌~〇ね~」
*注 〇には生命の終焉を表す直接的な語が入る。
あいみょん、おめぇ。
アラサー男の俺が、この曲に対する感想はただ1つ「恐怖」だろ。この曲は、過激さを通り越して、完全にアウトだろ。
強いて何かを言うとすれば、あいみょん、おめぇは潔い。本当にやべぇ奴は、そのやばさを醸し出さない。
リアルなメンヘラは爪を隠す。
いかにも普通っぽい見た目で近づいてきて、こっちに身構える隙も与えずいきなり抜刀し、襲い掛かってくる。見た目が普通っぽいから、こちらも対処できない。
一方で、腰に人の腕をぶら下げている女がいたら、
(あっ、あいみょんだ)
って身構えることが出来る。
腰に人の腕をぶら下げることで、これからあなたを恐怖のどん底に落とし入れますよって教えてくれている。
おかげでこっちも、こりゃまずいって刀を抜いて構えることが出来る。なんならその前に多分警察が捕まえてくれる。
決して不意打ちしてこない。
しっかりと相手に刀を抜かせてから、襲ってくる。
あいみょん is サムライ。
「どうせ死ぬなら」
あいみょん、おめぇ。
これは、月曜朝の俺だな。
あー、もう会社に行く時間だ、起きなきゃ。
でも、もう少しぬくぬくしていたい。
今起きないと、このまま二度寝して遅刻する。
でもぬくぬくしていたい。
あーこのまま二度寝できたらどんなに幸せか。
もういっそこのまま死なせてくれ。
の感情だろ。
よく分かる。なんなら毎週やってる。
父ちゃんと母ちゃんの間に挟まれて死にたいとか、死んだ後まで親孝行考えてんのかよ。
どんだけ愛情深いんだよ。絶対、面倒見のいいタイプの友達だろ。
相手のことを真剣に考えてるからこそ、あえて厳しく接する時があるタイプの友達だろ。
かとおもったら、顔しわくちゃになるまで笑いあえるタイプの友達だろ。
「ほろ酔い」
あいみょん、おめぇは誰なんだよ。
この曲はてっきりカバーかと思ったら、
作詞・作曲あいみょん
笑わせんな。
この曲はあれだろ、長渕剛とかが少しうなだれながら、でもどこか力強く唄う曲だろ。
「とんぼ」とか「乾杯」とか有名な曲が一通り終わって終盤に行く前に、コアなファンを喜ばせるためにそっと忍ばせる曲だろ。
なにさらっと唄い上げてんの?
ほろよいのぉぉぉぉ~、ままぁぁぁあでぇぇええ
じゃねぇよ。
ほろ酔いのままで
いさせておくれよ
お前を抱きたい夜
終わったことさ
最低なままでいさせて
“最低なままでいさせて“ なんてなんで書けんだよ、Why?
調べてみたら、この曲が収録されてるアルバム「憎まれっ子世に憚る」、2015年リリースじゃねぇか。てことはおめぇが、20歳の時の曲じゃねぇかよ。
こちとら、30歳を手前にして未だにワインの味がわからねぇんだよ。
赤いか白いか、シュワシュワするかしないか、飲みやすいか飲みにくいか、ぐらいの違いしか分からねぇんだよ。
でも確か初めてビール飲んだ時も、
(何これ?まずっ)
て思ったけど、今はそれなりに飲めるから、きっとワインもそのうち分かる時がくるだろう、ゆっくりだけど着実に次のステージに進んでいる。大丈夫。
ってようやく最近自分を納得させたところなんだよ。
なのに、あいみょん、おめぇはなんでいきなり、“最低なままでいさせて“のステージにいるんだよ。
天才か、おめぇは。
「マリーゴールド」
はいはい。マリーゴールド。ローズマリーにルーズベルト。どうせこれも糞。
あいみょん、おめぇこれはあれだ。
2人で過ごす初めての8月下旬、今思えば、どうしてあんなに真っすぐに、真面目に向き合えていたんだろう、って笑えちゃうくらいとにかく一生懸命に恋をしていたあの夏の日、目に映るものすべてが温かなオレンジ色に包まれていて、幸せだとか、好きとか言葉に出すけど、本当はそんなことどうでもいいやって思えたあの夏の日、麦わら帽子をかぶる君の後ろ姿はまるでマリーゴールドみたい、という視覚的な描写をしつつ、この感情がマリーゴールドの花言葉「変わらぬ愛」であることをそっと願うけども、風が吹くだけで揺らいでしまうような初々しさ故の不安を取り除くにはアイラヴユーなんて言葉だけでは足りなくて、ふいにキスしたあの夏の日、
という誰もが経験できる類のものではないはずのに、あたかも自分にもあったかのような錯覚を起こすほど、これでもかってほどノスタルジックに表現されている名曲すぎて、まじで糞。
くそーーーーーーッ。
あいみょん、おめぇ。
最後に言いたいのは、そのアーティスト名。
あいみょん。
中学校に入りたての女子が引き出しの奥に隠したノートに書いてそうなバンド名はもう勘弁してくれって思っていたところに、あいみょん。
時間が経って、ノートの存在すら忘れた頃に、たまたま発見されて死にたくなるようなバンド名とは対極にいるあいみょん。
しかも調べてみると、友達がつけたあだ名をそのままアーティスト名にしたみたいだな。
一生を左右するかもしれない、アーティストとしての看板を表す名前。
それを友達がつけたあだ名にするなんて、やっぱりおめぇは友達思いかよ。
しかもその友達は「○○ちゃん」のモデルになっているそうだな。
曲にまでしちゃうなんてどんだけその友達大切にしてんだよ。
ただこのアーティスト名、ここ最近で1番いい。
ゆず以来1番いい。その前は爆風スランプ。
なによりみょんがいい。
あいみょん。
あいみょん。
あいみょん。何回言ってもにっこりしちゃう。
色々書いたけど、まとめると、
あいみょんは
アラサー(もしくはそれ以上)には、受け入れにくい曲もあるが、とても親しみやすいのにオリジナリティあふれる曲が多く、総じて最高。
そして文章を読み返してみて、改めて、この文章を書いた俺は際限なくきもい。
おわり